PARCO劇場「迷子の時間 -語る室2020-」作・演出:前川知大 主演:亀梨和也
私は知らない。でも、思い出す。想像するとは、知らないことを思い出すことだ。
『迷子の時間 -語る室2020- 』 | PARCO STAGE -パルコステージ-
作・演出:前川知大
出演:亀梨和也 貫地谷しほり 浅利陽介 松岡広大 古屋隆太 生越千晴 忍成修吾
随分と久ぶりの更新になってしまいました。
書きたい事は色々ありましたが、最近は長文を書くのも面倒でツイッターでつぶやくだけで満足していました。
今回も感想というより、ツイッターでつぶやいた事を貼り付けただけですが、まとめておけばまた読み返す事もできるだろうと思い、更新する事にしました。
今回の舞台「迷子の時間 -語る室2020-」は、イキウメで過去に上演した「語る室」をベースにしたもの。
作・演出はもちろん前川知大さん。
亀梨君にとっては5年ぶりの舞台。前回の「靑い種子は太陽のなかにある」は音楽劇だったので、これが初めてのストレートプレイ(前回の感想は→こちら)。
なんかすごいものがきたぞ。というのが最初の印象でしたが、蓋をあけてみてもすごく面白く、意外な事にすごくわかりやすい舞台でした(難解なものを予想していたので)。
今回の企画について、前川さんのインタビュー
今回の公演は、新生PARCO劇場のオープニング・シリーズの一作になるのですが、そこで上演するなら、やはりちょっと自信があるものを持ってきたいという思いがまずあって(笑)。
5年前に上演した「語る室」の台本を読み返してみると、いま自分の中で大きくなっているテーマが、すでにこの作品に色濃く書かれていて、もう一度そこに戻ってみたいというのがありました。
劇団のファン以外にも、もっとたくさんの方に観てほしい作品だなと思ったんですね。ではそれを誰に演じてもらうか。
そのときにまず浮かんだのが亀梨さんでした。
前回の「語る室」で主人公を演じた安井順平とはイメージがまったく違うんですけど、だからこそおもしろくなるんじゃないかなと思って。
それでダメ元でお願いしてみたら、台本を気に入ってもらったみたいで、出演を承諾していただけたという次第です。
物語の舞台はある田舎町。
5年前にエンジンがかかったままのバスから園児と送迎バスの運転手が姿を消し、事件は未解決のまま。
登場人物は、園児の母親と叔父、バス運転手の兄、霊媒師、帰る事の出来ない未来人、ヒッチハイカーとその妹。の7人。
途中何度か時間が前後し、同じ場面が繰り返される。
そして「そうだったのか」と少しずつバラバラに散らばったエピソードと人物が繋がっていき、事件の真相が見えてくる。観客にだけ。
その点と点が一本の線になった時、なんとも言えない切なさやるせなさがこみあげてくるけれども、わずかな光を灯して舞台は幕を閉じる。そんな印象。
感情を揺さぶる演出ではないのに(そこがとても良かった)、へんに感傷的になってしまったのは、夕暮れのチャイムせいでしょうか。
これを聞くと誰でも故郷を思い出すはず。
人は色々な人に出会い、色々な場所で生きていくけれども、最後は魂は同じ場所へ戻っていく。なんて事を思ったり。
最後の譲の語りは台本にはなかったので、今回のオリジナルなんですね。
亀梨君の田舎ののんびりとした警察官ぶりはとても良かったです。
さて、後はツイッターでつぶやいた事を貼っておきます。
迷子の時間 語る室2020 見てきた。面白かった!観客は真相を知ったけど当事者である彼らは知らないまま。いつもと同じ一日。なんのかわりもなく終わった一日。五年前のこの日に事件があったというだけの日。刺さった棘が抜けないままの優しい哀しい人達のバーベキューは妙に明るくてその明るさが切ない
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
私は亀梨さんの演技にまたまたびっくりしてしまって。俺俺の時と同じ。彼はこういう普通の、普通だけど普通からほんの少しズレた人が合ってて上手いなあ、と思う。山猫みたいにキャラクターを全面に出す役とは違った上手さ
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
声が違って最初誰だか分からなかった、という感想見たけど、ほんとそうだった。あと、カーテンコールになった途端それまでの猫背の譲の影もなく、いつもの歩き方になったのも役者さんだなあと
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
譲は飄々としていて姉を心配する気持ち以外の感情がよく分からないのは、見える人だからなんだね。物語全体に漂う諦念は、譲に一番感じた。でも希望を捨てているわけでもない。不思議な人だな。よく分からない人だけど、よく分かる。亀梨さんの役作りは今回も一本筋が通っていてとっても良かっです
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
安井さんの譲はどんな感じなのか見たくなった
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
誰(た)そ彼(かれ)は。逢魔が時は目をこらさないと誰だか分からなくなる。こっちの世界もあっちの世界も。過去も未来も現在も混ざりあう。譲はその真ん中にいるんだね。分からないことだらけだけど、語り部なんだな。譲よりも多くを知ってる霊媒師がそれではなく
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
誰そ彼(黄昏)は、万葉集にも源氏物語にも出てくる。日本語って目にも耳にも美しいな
— あかり (@akari_223) November 27, 2020
希望がないわけでもない静かな終わりだけどよく考えると希望はない。この先真相を彼らが知るとも思えない。霊媒師でさえ全てを知らない。いろんな偶然が重なって一本の線になったけどそれが見えたのは観客だけ。それも夕暮れのチャイムと共に消えてしまったかのよう。それとも知らない事が希望なのかな
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
ストレートプレイ観るの木皿さん脚本のハルナガニ以来だった。シアタートラムはもっと小さいハコだったけど、劇場で観る役者さんの生の演技の肌触りはどこも同じ。舞台って空間の広がりも濃さも独特で、その空間にどろりと溶けていくような感触が他では味わえなくていいなあと
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
ガルシアが一番の迷子だったね。縦軸でも横軸でも。大輔はそういう意味では迷いはあっても迷子ではなく
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
直虎を見てたので貫地谷さんの母親役は期待しかなく。期待以上の母親だった。喪失と錯乱と空虚と。どれも母親以外の何者でもなかった。霊媒師の古屋さんがとても素敵。台本でも「~なのよ」という話し方なのねw 浅利くんは上手いなあ。あの間に笑いっぱなしだったよ
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
ガルシアの松岡君は若さゆえの熱量でキラキラしてた。あれを毎回やるのは消耗するだろうな
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
パンフレットの入江監督のテキストがとても良い。亀梨さんについて河野Pもベムの時同じような事をおっしゃってたね。どんなにひどい状況に陥っても彼は汚れない。変わらない彼の本質。石井裕也監督は、彼は同じ年代の若手俳優の中にいても異彩を放っていたとバンクーバーの時におっしゃっていたっけ
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
前川さんの「私たちは自分でよく分かっていないことを知っているのです。そしてその知っているということを知らない」という言葉。前川さんは観劇のヒントになるかもと書かれているけど、観劇後に読むとより一層染みてくる言葉ですね
— あかり (@akari_223) November 26, 2020
美しい星の時に、吉田大八監督が「音楽やダンスをやってる人の凄さでしょうか、亀梨君は狙ったトーンの音がすぐ出せる」とおっしゃっていたけど、迷子の時間の譲のあの話し方やトーンも亀梨さん(か前川さん)の狙い通りなんだろうな
— あかり (@akari_223) November 27, 2020
パンフレットに書かれていた前川さんの言葉。
「私たちは自分でよく分かっていないことを知っているのです。そしてその知っているということを知らない」
これが全てを物語っているのだと思います。
舞台を観た後に、全ての理解が下りてくる。
漠然としたものだけどはっきりと。
ああ、そういう事なんだな。と。
これを書いている時はまだいつかは発表されていませんが、配信の予定もあるとの事。
あの優しい時間にまた浸れる事が出来ると思うと嬉しくてたまりません。