午前三時の月あかり

亀梨和也君と日常ごと。木皿泉さんの事なども。

映画「俺俺」感想(ネタばれ有)

亀梨和也主演、三木聡監督の映画「俺俺」観てきました。面白かったー!私が亀梨君のドラマや映画を観て脚本や演技で引っかかるところなく思う存分絶賛出来るのは野ブタ以来です。公開初日から観に行き既に4回観ました。それでも全然飽きない。まだまだ観たい!嬉しい!


三木監督作品は「イン・ザ・プール」「亀は意外と速く泳ぐ「転々」インスタント沼」、そして「時効警察」を観てますが、最初は「俺俺」も三木作品でよく言われている「脱力系コメディ」に近いものだと思っていました。ポスターもポップですし、予告映像もシュールですがコメディっぽいとも思えるし。


ですが実際観てみると笑いどころはあるもののかなりダークで不条理な世界。思いっきり好みの映画でした。


始まってすぐの摩訶不思議な音楽と立ち並ぶ要塞のような団地群。団地の隙間から覗くどんよりとした空。そこから感じたのは閉じた世界の息がつまるような圧迫感。三木監督が、日常がズレていってしまう感じをどう表現するかがこの作品のポイントとおっしゃっていましたが、日常が少しずつズレていくその始まりのような不穏さを感じました。


均がなんの気なしにしてしまった俺俺詐欺をきっかけに増殖が始まる。ある日実家に帰ると自分がいた。そしてどんどん増えてゆく劣化コピーの自分。その理由のない恐ろしさ。それが全て自分である恐ろしさ。「均」という名前も改めて考えると興味深いです。


増殖とは言っても分裂して新しく出現した自分ではなく、もともと大樹という人間がいて、それが自分になってしまったのが面白い所であり、最大の謎でもあり。大樹だけでなく他の人もそうですが。


途中ドロドロの液体が何度か出てきますが、それが今にも動き出しそうで、人間の体の中に入り込み体を乗っ取る意志を持った液体のように思えて不気味でした。コップに水を汲むシーンもよく出てきましたがドロドロの液体が蛇口からも出てくるんじゃないかと^^; でもそれも狙いだったのかなと。街中あちこちに出てくる沢山の「目」のように、均の強迫観念みたいなものが実体化したものなのかなーなんて。


大樹の母の尾行をしてる時、ピンクのドロドロに驚き飛び退く均が面白かったです。舞台挨拶レポによるとあれは亀梨君のアドリブのようで。ああいうリアクション上手いなといつも思います。運動神経、反射神経がいいなとも。


あのドロドロは何だったのか、そもそも増殖がなぜ起こったのか(きっかけじゃなくて原因)という小さな疑問から大きな疑問まで殆ど説明されていませんが私は説明がないのがいいと思いました。スッキリしないという感想も多く見かけましたが、私は説明しすぎるとあの奇妙な世界のバランスが崩れると思ったので。


ラストの均と母親の会話と均の表情も意味深で、残ったのは本当に均?という疑いも出てきますが(でもやっぱり均ですよね)、最後日常が戻ってきたけれども、前とは少し変わった日常になっていた。均が成長したせいなのかまわりの状況が変わったのか、それとも両方か。というごく普通の結論に落ち着きました。私の中では。でもパラレルワールドという解釈があっても面白いなと。


均の母親は最初は均の事を「君」と呼んでいて、最後のシーンでは「あんた」と呼んでいるんですよね。均と母親との関係もちょっと変わったのかな。ちょっと近くなったのかな。なんて。それともただの気まぐれか。

物語の結末としては割とスッキリ終わったように思いますが、前述の通り多くの疑問が残ったままなので「まだ何かあるんじゃないか」と映画が終わった後でも考えてしまいます。でもその「何だったんだろう」というのも余韻としていいんじゃないかと。


現実の世界でも全ての謎が解決されるなんて事はないのだし、結局自分が誰かなんて生きている限りずっとつきまとう疑問なのだから、なんてね(笑)。

意味のある事と意味のない事が同じ重さでまんべんなくちりばめられていて、どんな解釈をしても何かしら謎が残るんじゃないか。それを狙っているんじゃないか。なんて思いました。

感想というより思いつくままだらだらと書いてしまいましたが、私が映像や音楽とともに驚嘆したのは亀梨君の特に均の演技なんですが、これはまた別に書きたいです。多分。

そしてもう本日になってしまいましたが、6月1日にヒューマントラスト渋谷で三木聡監督と宇野常寛さんのトークイベントに行ってきます。

宇野さんと言えばこちらでも書きましたが、野ブタファンと木皿ファンにはおなじみです。「週刊 野ブタ。」では“善良な市民”さんでした。最近ではベムのパンフレットや木皿さん関係の本にも寄稿されています。


監督やスタッフの方の話を聞くのが大好きなのでとても楽しみです。そしてまた「俺俺」を観られる.:*・゜ああ幸せ.:*・゜


追記:
トークイベントすごーーーく面白かったです。「熱海の捜査官」を見てなかったのでそのあたりの話の意味がよく分からず、悔しかったので(笑)すぐ借りて見ました。なるほどー(納得)。


こちらに三木監督と宇野さんの対談が載っています。トークイベントで出た話もあり面白かったです。
俺たちはキャラクター化している 三木聡×宇野常寛『俺俺』対談