木皿食堂 第23回「ひとりメシ」
第23回 「ひとりメシ」(2013.3.3)
木皿さん(年季子さん)が実家を出て一人暮らしを始めたのは31歳の時だそうです。
家を出たらあれもしたいこれもしたいと思っていたが、結局は似たようなものを食べるし、似たような部屋になってしまう。慣性の法則だなぁと思う。と。
3月14日から始まる木皿泉さん脚本の舞台「君をほほえめば」についても触れています。
家を出た時、食べ慣れたものを食べたのは不安だったからだろう。と。この芝居を書きながら、現実を受け入れるのは難しいものだとつくづく思った。私たちが一番受け入れがたい現実は、親がいずれ死ぬということではないだろうか。子供の頃、そんなことを想像しただけで怖かった。一人暮らしを始めるというのは、まずそのことを引き受ける第一歩なのかもしれない。
一人でメシを食うということは、片手に箸を、もう片方の手に茶碗を持つように、不安と自由をうまく扱えるようになる、その手始めなのだと思う。
私も小さい頃からずっと母が死ぬのが怖かったです。父を早くに亡くしたので余計に。どうしようどうしようと不安に苛まれたあげく「そうだ!その時は私も死のう」と思い、そう思った途端すうっと心が軽くなったんですね。
実際そんな事は出来ないし、出来ないだろうとその当時も分かっていたんですが、それはある種の「おまじない」だったのかなあと。痛いの痛いのとんでけーみたいに(ちょっと違うかも笑)。
そんな事はもうとっくの昔に思わなくなりましたが、そう思わなくなった時が私にとって現実を受け入れ始めた時だったのかなあと思います(でも今もまだ途中です。きっと)。