午前三時の月あかり

亀梨和也君と日常ごと。木皿泉さんの事なども。

木皿食堂 第18回「口から食べる」

第18回 「口から食べる」(2012.10.7)


野ブタの話が載っていると聞いて楽しみにしてました(野ブタ出なので笑)今月の木皿食堂。


2004年にツトムさんが脳内出血で半身マヒになり、食べ物が飲み込めなくなった時の話。先生は胃に直接栄養を入れる為に胃に穴を開ける手術をすすめてきたがトキコさんはその話があるたびに「イヤです」とつっぱねたそう。そしてリハビリをしてくれる言語聴覚士の先生という強い味方を得、飲み込む訓練を辛抱強くやり続けた。


同じ頃「野ブタ。をプロデュース」をドラマ化しないかという話をいただいて正直迷っていたそうです。


自宅介護で時間的に大変というのもあったが、それより、バブル以降、私は若い人に興味を持てなかったのだ。何を考えているのか、わからなかったし、正直わかろうという気もしなかった。できれば、この先、理解不能なことにはかかわらずに生きてゆきたいと思っていたのだ。

が、得体の知れないものを懸命に食べている相方を見ていて、それは違うなと思った。食べるというのは、自分に必要なものを補うということだけではないのだ。外の世界のものを噛み砕いて、自分の体の中に取り入れてゆく。自分の口からものを食べるというのは、力強く、外の世界を生きてゆくということだ。誰かが作ったものを食べる。誰かがとってきたものを食べる。食べる事を失うことは、外の世界を失うということだ。

私はわからなくても書こうと思った。自分で噛み砕く努力を、してみようと決めた。

現在ツトムさんは何でも食べられるようになり、一日一回は「うまいなぁ」と感嘆し、グルメ番組を見ては「こんなもんあるんかぁ」と感心しているそうです。


そうだ、この世には、まだ食べたことのないものが山のようにある。そして、まだ書いていないものも、山のようにあるのである。


私の祖母はもう亡くなりましたが、生前胃ろうの手術をしました。病気をする前はお寿司が大好きでしたが、若者が食べるような、例えばファーストフードやたこ焼きなども「美味しい美味しい」と嬉しそうに食べていました。高いものや安いもの、色々な「美味しい」をもっともっと味あわせてあげたかったなと思います。


そういえば、舞台「すうねるところ」にも食べる事に必要なあるものが出てきます。とてもとても重要なものが。


食べる事。取り入れる事。吐き出す事。言葉にする事。「食べる」「話す」事で外の世界とつながるその重要な役割を「口」という同じ部位が担っているんですね。人間の体というものは本当に不思議で有難いものだと思います。